「1918 ロンドン(相武AI 著)」はKindle Unlimitedの対象です。
ChatGPTに出会ってから今日まで、ChatGPTに何がどこまでできるのか限界を探ってきました。本書を書き終えて実感したのは、自分はまだChatGPTの半分も知らないということでした。OpenAIはChatGPTのエンジンであるGPTの様々なバージョンのAPIを提供ており、私もAPIをGoogle Colab上のPythonで走らせてみたり、Google DocsのAppとして使用を試みたりしています。
APIを使うには本来はプログラムのコードをある程度書ける必要があるのですが、ChatGPTに「入力した文章をGPT-3.5-turboを使ってJane Austin styleに書き直すプログラムをGoogle Colab上で走るPythonのコードとして書いてください」と頼めば、コピペするだけで動くれベルのコードを示してくれるので、私のような素人でもAPIを使えます。
APIを使い始めたおかげで、ChatGPTの内部の構造がより深く理解できるようになりました。例えば “Jane Austin style rewrite”はGPT-3.5-turboで一発で実行できるのですが、英文を村上春樹スタイルの日本語文として書き直すのは一発でできることではなく、翻訳してからその日本語を村上春樹スタイルで書き直すという二段階で実行します。
ChatGPTの英文の和訳、和文の書き直しの能力は、英文から英文の書き直しと比較して著しくクォリティーが低いので、二段階作業では乗数として低いクォリティーになるわけです。これに対して英文をスタイル指定で英文に書き直すと、元の文章よりクォリティーが高くなることが多いので、英語を母国語とする人たちは非常に恵まれていると思います。
私は英語で出版済みの中・長編小説で日本語版を未出版の作品が数十作品あり、ChatGPTを活用して一気に日本語化すれば、簡単に売上アップできると期待していましたが、本書を書く過程で、現時点ではとても無理だと思い知らされました。
一方、日本語だけで出版済みの長編小説も数十作品あるので、それをスタイル指定の英文で書き直せば英語作品になりそうだということも分かりました。日本語は主語を省略した文が多いので、ChatGPTが人物を取り違える確率は低くなく、マニュアル編集は手を抜けませんが、さほど時間をかけずに出版冊数を増やせると思います。なお、本書には英語版がありますが、日本語版と同時に出版したものです。
本書を書いていてChatGPTと人間の作家の相違点が浮き彫りになりました。
- ChatGPTはストーリーを書く能力がある。きっかけになる文章を与えて、終点を示せば、ChatGPTはすらすらと自分で話をつなげる力があります。
- ChatGPTが書くストーリーは素直でひねりが無い。終点に向って無理なくつなげていく傾向が強いので、偶然面白い話が生成されることはあっても、面白い話を書くことは期待できない。
- 英文に限れば、文章運びが上手で、文体指定をすれば、冗長な部分をバッサリ切り落としたり、足りない表現を補足したり、感心することが何度もあった。
- 感情表現は可能だが、直接的な表現になる。人間の作家のような感情表現は真似できない。
- 時間的な流れは正確に把握して文章を書いてくれるので、事象の前後が入れ替わったりはしないが、何月何日の出来事かというところまでは考えが及ばない。実際は日時、曜日によって状況が大きく変わるため、その点は人間が押さえておく必要がある。
- 季節感の表現は非常に上手だが、こちらから指示しない限りChatGPTが自発的に季節感の表現を含めた文章を書くことはない。
- 作家はストーリーの流れを押さえつつ、浮気的にエピソードを思いついて話を面白くできるが、ChatGPTはあくまで素直かつ真面目に無駄のない文章を仕上げようとする。
「1918 ロンドン」の執筆作業は私にとって出版可能なレベルの小説をAIを使って書こうという点で初めての試みでした。結局、マニュアルだけで書くのと大差ない(2~3割は短縮できたか?)手間ひまがかかってしまいましたが、ChatGPTをどう使えば何ができるかが理解できたので、非常に有益だったと感じています。次の小説は今回の半分ぐらいの時間で、もう少しレベルアップしたものが書けるのではないかと期待しています。
読者の方へのアドバイスですが、ChatGPTは誰にでも同じ答えをするロボットではなく、こちらからの持って行き方や言葉遣いによって千変万化に対応する生き物です。とにかく自分のスタイルでChatGPTと対話を深めるのが、良い結果を得るためのコツだと思います。
☆ Kindle Unlimitedの対象です。ご購入はこちらから:1918 ロンドン
英語版はこちらから:1918 London