「どうする家康」では本能寺の変で織田信長が滅び、豊臣秀吉と徳川家康の争いが佳境に入っていますが、信長・秀吉・家康の3人の間での疑似討論会を、後述するソロパフォーマンスプロンプティング(SPP)の手法によって、文章生成AIにシミュレートさせてみました。文章生成AIとしてはChatGPT、Bard、Claudeを用いた所、最も優秀だったのはClaudeで、2位がChatGPT、最下位がBardでした。
議題:隣国が領内に攻め入って来た時にどのように対応すべきか?
Claude
信長:隣国の侵攻だと? くだらない。我が軍勢をもってすぐに打ち破ってやる。相手の大名は内通したとして処刑し、その領地を手に入れる好機だ。早速出陣の手はずを整えよ。あの隣国どもを思い知らせてやる。
秀吉: 隣国からの侵攻は看過できない。だが無闇に武力で応じるのは得策でない。まずは講和の使者を送り、侵攻の理由を問うべきだ。それでも退かないならば、やむを得ず武力を行使する。人命が失われることは避けたい。外交的に解決できる道を探るべき時だ。
信長:秀吉の意見は甘すぎる。講和使者など送る時間はない。我が国は強力な軍制を持っている。速やかに襲来した隣国の軍勢を撃退すべきだ。そうすれば、二度と侵攻を企てることはできまい。武力で覇を唱える時だ。ためらうことなく出陣せよ!
秀吉:信長公、ご意見は威力を誇示するに値する。しかし軽率に武力に訴えることは、逆に諸国の不信を招く恐れがある。外交的手段を模索するのが賢明な選択と考える。
家康:お二人の意見にはそれぞれ一理あると思う。しかしながら、隣国の侵攻に対しては、状況を見極める必要がある。その国の実力が見当違いならば、信長公の意見通り武力で応じるのが手っ取り早い。一方、侵攻国が大勢力であるならば、秀吉公の意見の通り外交を優先すべきだろう。形式的な武力誇示も検討に値する。大切なのは、国内の統制を乱すことなく、国力の蓄積を図ることではないか。
秀吉:家康公の見解は明智である。状況を見極めることが重要だと思う。国力を分散せず蓄積を図るという点にも賛同する。一定の武力誇示も検討に値するだろう。
信長:そうか、家康の意見は妥当なところがある。状況判断が大切だ。ただ隣国の侮辱的行為には、見過ごすわけにはいかない。適切な形で軍事力を示すべきだ。外交も並行して進めるが、武力選択肢は排除しない。
家康:お二人のご意見に敬意を表する。隣国の侵攻に対しては、まず状況判断を行い、国力を分散させないことを優先する。その上で、外交と適切な武力示威の併用が賢明だと思う。隣国の侵略の意志をくじきつつ、国内の統制を保つことができるだろう。これが私の意見である。
ChatGPT
織田信長:隣国が攻め入ってくるというのならば、まず彼らの意図や動機を見極める必要がある。全面的な戦争を避けることができるならば交渉の道も探るべきだ。だが、真の脅威と判断すれば、私は迷わず彼らを打ち破る覚悟がある。
豊臣秀吉:信長殿の言葉には同意するが、我々は力の示し合いだけではなく、戦術としても利用するべきだ。隣国が侵攻してきたら、その意図や背後にいる大名を知ることが重要だ。また、彼らとの同盟や取引で状況を有利に進めることも考えられる。
徳川家康:確かに、隣国との関係を慎重に築いていく必要がある。しかし、何よりも重要なのは、我が国の統治体制や領土の安定を最優先とすることだ。交渉や同盟も良いが、それが我が国の安定を乱すようであれば、戦の選択も避けてはならない。
織田信長:それは正しい。しかし、戦争は資源や人員の消耗を伴う。可能ならば、戦を避けるための策略や計略を巡らせるべきだ。
豊臣秀吉:計略や策略は大切だが、時として強固な意思表示や力の示し合いが必要になることもある。そういった場面での迅速な決断も大切だろう。
徳川家康:お二人の意見を伺い、総じて、隣国との関係には慎重になるべきだと感じる。交渉や策略を駆使して、できるだけ衝突を避ける方針を持つ。しかし、国の安定や人々の安全が脅かされる場合、戦の選択を避けてはならない。最終的な判断は、状況や情報に基づき柔軟に行うべきだと思う。
Bard
織田信長:隣国が攻め入ってきたら、私はすぐに戦争を仕掛けます。私は圧倒的な戦力で敵を打ち負かし、領土を守ります。また、敵国を滅ぼすことで、戦争のリスクを減らします。
豊臣秀吉:隣国が攻め入ってきたら、私はまずは交渉で解決を図ります。しかし、交渉が失敗した場合は、武力で対抗します。私は敵国を滅ぼすことで、戦争のリスクを減らします。
徳川家康:隣国が攻め入ってきたら、私はまず敵国との関係を修復しようとします。しかし、敵国が交渉に応じない場合は、武力で対抗します。私は敵国を滅ぼすことで、戦争のリスクを減らします。
家康:信長、秀吉の意見は、いずれも戦争を前提としています。しかし、私は戦争は避けるべきだと考えています。戦争は多くの死傷者を出し、国土も荒廃します。また、戦争が終わっても、敵国との間で緊張関係が続くこともあります。
私は、隣国が攻め入ってきたら、まず敵国との関係を修復しようとします。敵国と話し合い、領土問題を解決できる可能性を探ります。もし、交渉が失敗した場合は、武力で対抗しますが、あくまでも最善の手段として考えています。
私は、戦争は避けるべきだと考えていますが、国を守るためには武力も必要であると考えています。私は、武力を最小限に抑えながら、国を守るために最善を尽くします。
ソロパフォーマンスプロンプティング(SPP)
ソロパフォーマンスプロンプティング(SPP)とは、1つの大規模言語モデルを「認知的協調者」として機能させることで、複数のパーソナ(Persona、ペルソナ)を同定し、自己対話を通じてタスクを解決することができるようにする手法です。実際の用法としては通常通りText Promptを入力しますが、その際に複数のパーソナを記述するだけです。「どうする家康」を毎週楽しみに見ているので、今回は織田信長、豊臣秀吉、徳川家康のパーソナを用いてみました。
Text Prompt
あなたは複数の人格を持っており、各々の人物に成りきって思考し発言することができます。
Person 1: 織田信長
Person 2: 豊臣秀吉
Person 3: 徳川家康
この3人の間で「隣国が領内に攻め入って来た時にどのように対応すべきか」について自由討論を行ってください。3人が順不同で各々少なくとも3回意見を述べ、最終的に徳川家康が意見をまとめる形とします。なお、これら3人の人物像・性格・人格は以下の通りです。
Person 1: 織田信長の人物像、性格、人格
略。(ここにWikipediaの「織田信長」のページをClaudeで約1000文字に要約させたものを貼り付けます。)
Person 2: 豊臣秀吉の人物像、性格、人格
同上
Person 3: 徳川家康の人物像、性格、人格
同上
Wikipediaを要約させる
Claude(デフォルトでインターネットにアクセスできる)にWikipediaのURLを示して以下の通りに質問します。
質問:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B9%94%E7%94%B0%E4%BF%A1%E9%95%B7 を読んで、織田信長の人物像、性格、人格について2000文字にまとめてください。
回答:はい、織田信長の人物像、性格、人格について2000文字程度でまとめさせていただきます。
織田信長は戦国時代の武将であり、後に天下人と呼ばれるほどの権力を握った人物です。Wikipediaの記述からは、信長が非常に野心的な人物で、政治力・軍事力に秀でていたことがうかがえます。
信長は若くして家督を継ぎ、尾張国を統一して大名となりました。その後も領国を拡大し、天下統一を目指して各地の戦国大名と戦いを繰り広げました。戦国大名間の抗争や内紛にも巧みに介入し、自らの力を高めていきます。これらから、信長は強い統率力と政治手腕を持ち合わせた人物だと言えるでしょう。
また、信長は教養が高く、文化・学術を愛好する面もありました。堺の町を発展させ、堺を全国的な商業の中心地に押し上げたことも知られています。一方で、信長には冷酷な面もあり、敵対する者には容赦しませんでした。本能寺の変で信長が討たれた後、多くの家臣団が信長に対する恨みから離反したことも、その冷酷さを物語っています。
総じて、信長は強烈な個性と野心、政治手腕を持ち合わせた人物だったと言えます。時に冷酷非情な面も見せつつ、戦国大名の覇権を確立し、天下統一への足がかりを築き上げました。信長の死後も、信長の家臣団が天下人となり戦国を終結させることから、信長の人柄と事績が戦国時代に大きな影響を与えたことがわかります。
信長にはさまざまな逸話が残されていますが、その中から信長の人となりを垣間見ることができる例を挙げると、以下のような逸話があるでしょう。
-桶狭間の戦いで今川義元を討つなど冷酷な一面を見せつつ、犬山城の戦いでは無闇に戦端を開くことを避けようとした
-弟の織田信行を疑って殺害し、のちにその仕打ちを悔やんだと言われる
-堺の町を発展させて商工業を振興し、文化を愛好する一面を見せた
-本能寺の変で主君を裏切る家臣も多かったことから、信長には恩讐の情が強く、容赦ない面があった
これらの逸話からは、野心と強烈な個性、政治力・軍事力を持ちながら、信長には家族愛や人の情にも通じる一面があったことがうかがえます。複雑な人格を持ち合わせた、戦国時代の英主であったといえるのではないでしょうか。
以上、Wikipediaの記述や逸話から、強烈な個性と野心、政治手腕を持ち合わせながら、時に冷酷非情な面も併せ持っていた織田信長の人物像について、2000字程度でまとめさせていただきました。ご指摘いただければ幸いです。
ソロパフォーマンスプロンプティング(SPP)における文章生成AIの複合的能力
AIに織田信長・豊臣秀吉・徳川家康の3人の間で意見を戦わせるには、まず3人の人物像を詳細かつ正確に把握し、各々の人物像に基づいて思考・発言させ、しかも他の2人の意見に対して適切な反応をするという複合的な能力が必要になります。
今回の実験によりClaude、ChatGPT、Bardはいずれもソロパフォーマンスプロンプティング(SPP)に必要な総合力を備えていることが明らかになりました。
- Claude:織田信長・豊臣秀吉・徳川家康の3人が2023年の討論室に集合した場合、3人は歴史上の人物として対等な関係にありますが、数世紀の時を経ても3人の間には微妙な絆が残っています。信長が「秀吉の意見は甘すぎる」と一刀両断したのに対して秀吉は「秀吉:信長公、ご意見は威力を誇示するに値する」と下手に出てから意見を述べたり、まるで毎週「どうする家康」を見ているのではないかと思えるほど、機微を理解しているかのようです。また、文章的にもそこそこにくだけており、小説を書く際に登場人物の詳細なキャラクターを示せば、対話部分の原稿を書けそうなのはClaude一押しという結果でした。
- ChatGPT:一応基本は押さえていますが、織田信長・豊臣秀吉・徳川家康のキャラクターの違いを十分に読み取れていない発言が見られます。また、私が「3人が順不同で各々少なくとも3回意見を述べ」と質問したのに対して、各々2回の発言となっています。
- Bard:織田信長・豊臣秀吉・徳川家康のキャラクターの違いをWikipediaから的確に読み取り、3人に各々発言させた後に家康が勝手にまとめています。各人に関する個別作業はBardが優等生的に実施できていると思いますが、私がソロパフォーマンスプロンプティング(SPP)に求めるのは、3人に議論させてその結果としての解決策を導き出すことであり、Bardは及第点に達しているとは思えませんでした。
なお、Bingは2000文字の質問しか受け付けないため、今回の比較には含めませんでした。