「令和版」プロジェクトでの出版計画

「令和版プロジェクト」とは、明治、大正から昭和中期までに出版された古い文体の書物を、原著の味わいを保ちつつ旧字体・旧仮名づかいを改め、現代の読者が読みやすい文体にして、豊富な挿絵の入った「令和版」として再デビューさせる。そんな発想で開始したプロジェクトです。海洋フィクション・ノンフィクションを中心に5冊を出版しました。挿絵は可能な限り横幅2048 pixelsの全幅カラー画像を目途としています。1冊20画像以上、最も多い「令和版:海に生きるもの」では60画像を収載しており、章の題名と画像を追うだけでも面白いイラストフィクション、イラストノンフィクションを目指しています。

令和版:無人島に生きる十六人

日本が誇る漂流記・無人島生活記である「無人島に生きる十六人」は実話に基づいて難破船の乗組員たちの無人島での生き生きとした暮らしぶりが描かれた長編小説です。須川邦彦氏によって書かれた原作は、明治時代の海洋実話を基にしており、太平洋の無人島での冒険が生き生きと描かれた名作です。ロビンソン・クルーソーや十五少年漂流記に劣らない胸躍る冒険記ですが、文体や漢字仮名づかいが古く読みにくいため、知名度がもう一つでした。そんな小説の原作の味わいを損ねないように注意しながら現代語訳しました。48枚のカラフルなフルサイズの挿絵が本書を彩り、読者を無人島の冒険へと誘います。

令和版:船は生きてる

「無人島に生きる十六人」の数カ月前に出版された「船は生きてる」には、明治、大正、昭和初期の遠洋航海に関する世界中のエピソードが描かれています。海の男たちが100トンにも満たない帆船で七つの海を駆け巡った時代の遠洋航海の実態が実感できる、心躍る海洋ノンフィクションです。現代の読者にも読みやすく、かつ原作の雰囲気を損なわないように編集された本書にはフルサイズのオリジナル挿絵が28枚が収載されています。

令和版:海に生きるもの

「海に生きるもの」は「船は生きてる」で語りつくせなかった話題を続編として出版した作品です。

どちらを先に読んでも同じように楽しめますが、お勧めとしては、「無人島に生きる十六人」「船は生きてる」「海に生きるもの」の順で読めば、海洋に関する話題の通人になれると思います。挿絵の数は60枚と、「船は生きてる」の倍以上となっています。

令和版:象をたずねて

「無人島に生きる十六人」と「船は生きてる」の著者である須川邦彦氏は、明治38年に東京高等商船学校を卒業し、大阪商船で一等運転士、船長などとして 遠洋航路で活躍し、日露戦争は水雷敷設隊として、第一次世界大戦は船長として参戦した海の男ですが、須川氏は航海で立ち寄った国々で象に興味を持ち、「象」を趣味にしていました。「象をたずねて」は象に関する知識と日本、アジア、アフリカでの象に関する様々なエピソードを集めた、ノンフィクション・ブックです。「令和版:象をたずねて」は、現代の読者にも読みやすく、かつ原作の魅力を損なわないように細心の注意を払って編集され、20枚の高解像度イラストを収載した読み物です。

令和版:海島冒険奇譚 海底軍艦

「海島冒険奇譚 海底軍艦」は明治時代に冒険小説という新しいジャンルの先駆者として活躍し、日本のSFの祖とされる押川春浪氏が東京専門学校(現早稲田大学)在学中の明治33年に発表したSF小説であり、軍事冒険小説の原型とされています。須川氏より4歳年上、ほぼ同世代の作家です。

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小説とは文章により情景を表現べきものであり、高精細な大画面画像を数多く挿入することにより読者の想像力に水を差すのではないかとの懸念もありましたが、結果的に杞憂に終わりました。

例えば、海洋小説に「2本マストで76トンの帆船」と書かれていても、実際の構造や規模を正しく思い浮かべられる人は稀です。また、太平洋・インド洋で遭遇する動植物、自然現象についての様々な記述に接して各々の読者が頭に描く画像・映像は、千差万別です。私は現代語訳の作業工程を通じて、途方もないほどの調べ物をして、文章のそれこそ隅々まで熟読するので、原作者が頭に描いていたイメージを大多数の読者より鮮やかに再現することができる立場にあります。この点、実際に読んでいただければ実感していただけると思いますが、作者自身が描いた挿絵は読者が想像力を発揮する助力になると確信しています。

画像生成にはDall E、Stable Diffusion、Playground、Leonardo.ai、Tensor.art、Seart.ai、Microsoft Image Center、そして(まだ1枚ですが)Bardを、各々の特徴を生かして駆使し、数枚~数十枚かけて頭の中のイメージに徐々に近づけたうえでPhotoshopなどで仕上げます。2年前なら不可能、1年前でも困難だったことが、ここ数カ月の毎日のような技術進化により可能になったのは嬉しいことです。

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